2012年 06月 08日
室生古道 |
6月7日
奈良の旅、今回は古刹、仏隆寺から女人高野といわれる室生寺へと室生古道を歩き、
室生の里からはバスで移動、大野寺の磨崖仏を拝観した。
室生寺は東西南北に末寺が配され、参詣四門というらしいが、先ずは近鉄榛原駅からバスで10分程の高井バス停より、その南門にあたる仏隆寺へ40分の歩き。
道標に導かれ、頭矢橋を渡り古道へ入る。棚田の広がる道をゆるやかにのぼっていく。水田のほかに青々と緑の葉が伸びている作物はなんだろうと通りがかりの農家の方に聞くと、ダリアだと教えてくれる。花の栽培かと思ったがよく聞くと球根を収穫するのだとか。
道は徐々に急坂となり赤埴集落を過ぎると藁葺きの地蔵堂が見える。
左の192段の石段を登ったところに仏隆寺がある。右は室生寺への道。途中、樹齢900年という桜の巨木が石段をおおうように枝を伸ばしている。
天然記念物に指定されているこの桜はヤマザクラとエドヒガンの混雑種でモチヅキザクラというようだ。根周り7.7m、根元から2mのところで大小11本に分枝、それぞれが四方へ枝を伸ばしている。石段周りの傾斜地は美しく整備され、公園のようになっている。花見のころにはこの桜を中心に見事な景観が広がることだろう。 登りきった正面に本堂がある。850年、空海の弟子、堅恵が創建したと伝えられる七堂伽藍の名刹。本堂内には空海が唐から持ち帰ったという茶臼があり、持ち帰った茶の種子を栽培したことから大和茶発祥地とされている。境内には堅恵廟の石室もある。
仏隆寺を後にし、水車小屋横の山道に入るとうっそうとした杉木立の中、石がごろごろした古道が続く。
やがて役の行者の祠のある唐戸峠に出るとまわりは開け、ここからは下り道となる。山道と思っていたのだが近年に舗装されたようだ。途中、カトラ新池は周りの山が水を緑に染め、一羽のカモがゆったりと水面をすべる。
ここから先は、常にせせらぎの音を聞きながら、林道を室生の里へと下っていく。せせらぎの水は清んで美しくたくさんのアマゴ(たぶん)の姿も見える。
室生の里
腰痛にご利益があるという腰折地蔵の祠を過ぎ、室生の里へとどんどん下っていく。そこにはのどかな里風景が広がる。集落の入り口でまず目に留まるのが樹齢300年という西光寺の
しだれ桜。
室生寺
仏隆寺から約2時間で室生寺到着。太鼓橋を渡ると正面に表門がある。参拝は右へ進み、仁王門から。
★奈良時代後期(770~780)に、興福寺の高僧、賢憬が創建、その後、弟子、修円よって寺観が整えられたという。中世には衰退したが、徳川時代、桂昌院によって再興され、以来女人の入山を許可し「女人高野」と呼ばれるようになった。境内に入ると堂塔は後の山腹を背景に上へ上へと建ち並び、石段によって導かれる。先ず、鎧坂の上に、金堂と弥勒堂。さらに、灌頂堂(本堂)、五重塔と続き、その奥、原生林に囲まれた胸突きの石段(700段あまり)を登ったところに奥の院がある。★
金堂(平安初期・国宝) 杮ぶきの屋根と朱塗りの柱が周りの緑に映えて美しい。内陣には平安時代の一木造りの釈迦如来(本尊)を中心に右に薬師如来、地蔵菩薩、左に文殊菩薩、十一面観音がずらっと並び、その前に伝運慶作の十二神将(鎌倉時代)が一列に並ぶ。仏像群がライトアップされ、木像であるがゆえに柔和な雰囲気が漂い神々しく圧倒された。
左手にある弥勒堂も杉木立を背景に、古色が美しかった。
灌頂堂(鎌倉時代・国宝) 金堂左手の石段を上ると木立の中に建つのは1308年建立の堂々とした入母屋造り。内陣には一木造りの如意輪観菩薩像。金等で彩色された跡がわずかに見てとれる。長年月のほこりをかぶった様子がかえって落ち着いた雰囲気を醸し出す。 五重塔(平安時代初期・国宝) 総高16.1mで屋外に建つ五重塔としては最小で、当山では最古の建物ということだ。平成10年の台風で損傷し大きく報道されたが、2年後に修復されている。朱と白のコントラストが美しく屋根勾配が緩く、優しい感じがする。頂上の相輪に特徴があり、九輪の上には水煙というのが一般的だが、これは宝瓶を載せ、宝鐸を釣りめぐらし天蓋を作ってあると解説してあるのだが、下からではなかなか見にくい。写真を拡大して確認してみようと思う。 奥の院への長い石段はさすがに汗を絞る。数えたわけではないが700段あるそうだ。まだあるの~~という感じではあったが嬉しいことに一段ずつの幅が狭く、とんとんと一段ずつ踏め、登りやすくなっている。 奥の院、御影堂(鎌倉時代)弘法大師42歳の像を安置しているのだという。単層宝形造、珍しいのは屋根で、厚板段葺と言われ、材質はマキの木だそうだ。頂上に石造りの露盤が置かれているのが特徴だとか。寺の方の話によるとこの木製の瓦は800年たっているそうでよくぞ腐らないものだとびっくりする。左に見えるのは、七重石塔で本来一三重であったがこれもまた、台風の被害に遭ったのだとか。仏像の頭の形をした小山の上に立っていて、ゆえに上に登るべからずとのことだった。
大野寺磨崖仏
西門にあたる大野寺へ本来は歩いて下ればいいのだが、室生寺の見事な建築と仏像をゆっくり拝観したため時間がなくなり、バスに乗る。
宇陀川の清流に臨む大野寺は寺伝によると白鳳9年(681)役の小角が開き、弘法大師が室生寺開創の時に西の大門と定めたという。バス道からも見えるのだがせっかくだからと閉門ぎりぎりだったが境内に入りそこから宇陀川の対岸(彼岸)に線刻の巨大な磨崖仏を拝観した。 頭部拡大画像
室生古道のいたるところに生い茂っていた若い緑の葉は、帰宅後調べてみるとクラマゴケというシダ植物だとわかった。そして、6月の山らしく、咲き始めたコアジサイが美しかった。
内容はほぼ同じですが、画像数枚追加して「ホームページ」にも載せました。
奈良の旅、今回は古刹、仏隆寺から女人高野といわれる室生寺へと室生古道を歩き、
室生の里からはバスで移動、大野寺の磨崖仏を拝観した。
室生寺は東西南北に末寺が配され、参詣四門というらしいが、先ずは近鉄榛原駅からバスで10分程の高井バス停より、その南門にあたる仏隆寺へ40分の歩き。
道は徐々に急坂となり赤埴集落を過ぎると藁葺きの地蔵堂が見える。
やがて役の行者の祠のある唐戸峠に出るとまわりは開け、ここからは下り道となる。山道と思っていたのだが近年に舗装されたようだ。途中、カトラ新池は周りの山が水を緑に染め、一羽のカモがゆったりと水面をすべる。
腰痛にご利益があるという腰折地蔵の祠を過ぎ、室生の里へとどんどん下っていく。そこにはのどかな里風景が広がる。集落の入り口でまず目に留まるのが樹齢300年という西光寺の
しだれ桜。
★奈良時代後期(770~780)に、興福寺の高僧、賢憬が創建、その後、弟子、修円よって寺観が整えられたという。中世には衰退したが、徳川時代、桂昌院によって再興され、以来女人の入山を許可し「女人高野」と呼ばれるようになった。境内に入ると堂塔は後の山腹を背景に上へ上へと建ち並び、石段によって導かれる。先ず、鎧坂の上に、金堂と弥勒堂。さらに、灌頂堂(本堂)、五重塔と続き、その奥、原生林に囲まれた胸突きの石段(700段あまり)を登ったところに奥の院がある。★
左手にある弥勒堂も杉木立を背景に、古色が美しかった。
宇陀川の清流に臨む大野寺は寺伝によると白鳳9年(681)役の小角が開き、弘法大師が室生寺開創の時に西の大門と定めたという。バス道からも見えるのだがせっかくだからと閉門ぎりぎりだったが境内に入りそこから宇陀川の対岸(彼岸)に線刻の巨大な磨崖仏を拝観した。
室生古道のいたるところに生い茂っていた若い緑の葉は、帰宅後調べてみるとクラマゴケというシダ植物だとわかった。そして、6月の山らしく、咲き始めたコアジサイが美しかった。
内容はほぼ同じですが、画像数枚追加して「ホームページ」にも載せました。
by blue-robin2
| 2012-06-08 23:42
| 旅
|
Comments(8)
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あんず
at 2012-06-09 14:25
x
こんにちは。
天気予報が外れて太陽も顔を出してくれましたね。
奈良の旅も久しぶりにお聞きしますが、我々のようなツアー旅ではないので、本当に見たい場所をゆっくり見て、ご自分のペースで歩けるのは魅力ですね。
奈良もこういう古道歩きは歴史探訪になって単なる歩きとは違いますから楽しさも違うように思います。
仏隆寺は桜でも有名のようですね。ネットで見ましたら本当に見事な桜で時期であれば見てみたくなります。
歩く距離もあり階段もありで、やはり相当普段の体力作りが必要のようですが、歴史を感じながら又自然の花にも癒されながらのようで、何時もながら充実した時間を過ごされているように思います。
私は大野寺の磨崖仏に目が止まりましたが見事ですね。
勉強不足でお寺に関しては全く知識が乏しく適切な感想を言えなくてすみません。
私の姪が夫の転勤で奈良に住んでいたのですが、3月に橿原市に家を構えて永住の地にしたのですが、ここが気に入ったのが分かるような気がしました。
ちょっと散歩に出ても名所や旧跡などがあり、始めはびっくりしたようです。
藁葺きの地蔵堂や棚田など長閑な雰囲気も良いですね。
天気予報が外れて太陽も顔を出してくれましたね。
奈良の旅も久しぶりにお聞きしますが、我々のようなツアー旅ではないので、本当に見たい場所をゆっくり見て、ご自分のペースで歩けるのは魅力ですね。
奈良もこういう古道歩きは歴史探訪になって単なる歩きとは違いますから楽しさも違うように思います。
仏隆寺は桜でも有名のようですね。ネットで見ましたら本当に見事な桜で時期であれば見てみたくなります。
歩く距離もあり階段もありで、やはり相当普段の体力作りが必要のようですが、歴史を感じながら又自然の花にも癒されながらのようで、何時もながら充実した時間を過ごされているように思います。
私は大野寺の磨崖仏に目が止まりましたが見事ですね。
勉強不足でお寺に関しては全く知識が乏しく適切な感想を言えなくてすみません。
私の姪が夫の転勤で奈良に住んでいたのですが、3月に橿原市に家を構えて永住の地にしたのですが、ここが気に入ったのが分かるような気がしました。
ちょっと散歩に出ても名所や旧跡などがあり、始めはびっくりしたようです。
藁葺きの地蔵堂や棚田など長閑な雰囲気も良いですね。
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blue-robin2 at 2012-06-09 18:28
あんずさん こんばんは
昨年晩秋に行った浄瑠璃寺は奈良発とはいえ、所在地は京都府ですから、奈良は昨年9月の飛鳥以来です。
一日前から行って泊まれば歩く出発を早められるのですが、日帰りということにこだわっていて歩き始めが11時前後からですから、いわゆるガイドブック通りにはなかなかいきません。が、体の疲れからするとちょうど無理のない歩きかなと思っています。
桜に続いて連休のころには室生寺のシャクナゲも美しいようですが、きっとそんな時には人も多くて、今回のような静寂な寺を訪れるという雰囲気ではなかったのじゃないかと思います。
新緑もなかなか良かったですよ~~。
磨崖仏や野仏など、なかなかいいですよね。
御親戚がおられるんでしたら、またいつか泊まりがけでお出かけも可能かもしれませんね。奈良はおおらかでいいところですよ!
昨年晩秋に行った浄瑠璃寺は奈良発とはいえ、所在地は京都府ですから、奈良は昨年9月の飛鳥以来です。
一日前から行って泊まれば歩く出発を早められるのですが、日帰りということにこだわっていて歩き始めが11時前後からですから、いわゆるガイドブック通りにはなかなかいきません。が、体の疲れからするとちょうど無理のない歩きかなと思っています。
桜に続いて連休のころには室生寺のシャクナゲも美しいようですが、きっとそんな時には人も多くて、今回のような静寂な寺を訪れるという雰囲気ではなかったのじゃないかと思います。
新緑もなかなか良かったですよ~~。
磨崖仏や野仏など、なかなかいいですよね。
御親戚がおられるんでしたら、またいつか泊まりがけでお出かけも可能かもしれませんね。奈良はおおらかでいいところですよ!
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田舎の番人
at 2012-06-10 10:46
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いやあ 「室生古道 トレッキング紀行」 楽しみました!
歴史を感じながらの歩き 楽しいでしょうね~ ありがとうございました
先日 BSでイギリスの湖水地方でしたか トレッキンングの放送がありましたが ゆったりとああいう場所を歩くのに憧れます 今は険しい山よりも
歴史を感じながらの歩き 楽しいでしょうね~ ありがとうございました
先日 BSでイギリスの湖水地方でしたか トレッキンングの放送がありましたが ゆったりとああいう場所を歩くのに憧れます 今は険しい山よりも
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blue-robin2 at 2012-06-11 11:57
番人さん
古代から栄えた奈良歩きは山越えの古道がいくつもあって、またその途中には歴史的な建造物があってという風に楽しめるハイキングです。
BSの湖水地方トレッキング、私もみました!
イギリスには高山はありませんがあのように緑豊かななだらかな山々が連なり、はるか下に湖水が広がりといった具合で気持ちがいいですね。昨年ほんの少し体験しましたが、あの放送のような時間をかけた歩きにあこがれますね。
古代から栄えた奈良歩きは山越えの古道がいくつもあって、またその途中には歴史的な建造物があってという風に楽しめるハイキングです。
BSの湖水地方トレッキング、私もみました!
イギリスには高山はありませんがあのように緑豊かななだらかな山々が連なり、はるか下に湖水が広がりといった具合で気持ちがいいですね。昨年ほんの少し体験しましたが、あの放送のような時間をかけた歩きにあこがれますね。
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monasa at 2012-06-11 20:46
室生古道歩きの歴史探訪を一緒に楽しませていただきました。
棚田の広がる里山を満喫し、長~い石段を登り天然記念物指定の桜の巨木に驚き
腰痛にならないよう祈願し室生寺の山門が見えほっとしました。
五重塔は平成10年の台風で損傷したその一週間前に行きました。
下からから見上げた塔はどっしりとし気品高く聳え立ちはだかっているようでした。
修復された塔を見上げ感動しました。
~古道を往く~ も見せていただき楽しかったです。
棚田の広がる里山を満喫し、長~い石段を登り天然記念物指定の桜の巨木に驚き
腰痛にならないよう祈願し室生寺の山門が見えほっとしました。
五重塔は平成10年の台風で損傷したその一週間前に行きました。
下からから見上げた塔はどっしりとし気品高く聳え立ちはだかっているようでした。
修復された塔を見上げ感動しました。
~古道を往く~ も見せていただき楽しかったです。
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blue-robin2 at 2012-06-11 22:12
monasaさん こんばんは
このブログの前は長くホームページを作ってましたので重複するのですがやっぱり向こうの旅のページに加えたくなり載せました。両方見てくださりありがとうございます。室生寺はmonasaさんも行かれたお寺だったのですね。思いだして楽しんでいただけたのなら幸いです。
昔は徒歩での山をこえ谷をこえの道ですが、その古道も時代とともに歩きよいように整備され車もはいれるようになっています。先人の足跡をたどるつもりで歩きました。
以前からあこがれていた室生寺は十分期待にこたえてくれる立派な寺で感動しました。
このブログの前は長くホームページを作ってましたので重複するのですがやっぱり向こうの旅のページに加えたくなり載せました。両方見てくださりありがとうございます。室生寺はmonasaさんも行かれたお寺だったのですね。思いだして楽しんでいただけたのなら幸いです。
昔は徒歩での山をこえ谷をこえの道ですが、その古道も時代とともに歩きよいように整備され車もはいれるようになっています。先人の足跡をたどるつもりで歩きました。
以前からあこがれていた室生寺は十分期待にこたえてくれる立派な寺で感動しました。
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Snufkin
at 2012-06-12 18:24
x
こんにちは。
室生古道の記事、拝見させていただきました。
古いお寺や杉林、見ていて感動です。
室生寺すばらしいですね。
中でも灌頂堂、緑の木立の中に堂々と佇む姿はとても美しいと思いました。
日帰りでこれだけの行程を歩かれるなんて・・・。
blue-robin2さん、素晴らしいです。
室生古道の記事、拝見させていただきました。
古いお寺や杉林、見ていて感動です。
室生寺すばらしいですね。
中でも灌頂堂、緑の木立の中に堂々と佇む姿はとても美しいと思いました。
日帰りでこれだけの行程を歩かれるなんて・・・。
blue-robin2さん、素晴らしいです。
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blue-robin2 at 2012-06-12 22:07
Snufkinさん こんばんは
奈良はおおらかな雰囲気が好きで、特にこういった古道歩きはいろんな人との出会いもあって楽しいです。
緑の美しい季節だったからかもしれませんが、どきっとするくらい美しいと思ったのが灌頂堂でした。
日帰りですから早朝に家を出ても歩く時間は限られます。地図を参考に道を探しながら「大丈夫かしらこの道で・・・・」いったこともありますがそれもまた結構楽しいものです。
奈良はおおらかな雰囲気が好きで、特にこういった古道歩きはいろんな人との出会いもあって楽しいです。
緑の美しい季節だったからかもしれませんが、どきっとするくらい美しいと思ったのが灌頂堂でした。
日帰りですから早朝に家を出ても歩く時間は限られます。地図を参考に道を探しながら「大丈夫かしらこの道で・・・・」いったこともありますがそれもまた結構楽しいものです。